異文化を体験するには、スーツケースに荷物を詰め、航空券を買うものだと思われがちです。でも私の歩みは少し違いました。ベトナムを拠点としたまま、キャリアを通じて世界中の働き方を体験してきました。日本、ドイツ、オーストラリアの企業で働くことで、世界で最も対照的なスタイルを最前線で見てきたのです。
これらの国の企業は、ベトナムでの私の日常に、それぞれ独自の「スパイス」を加えてくれました。私は単に仕事のやり方を学んだだけではありません。地球市民としての考え方を身につけたのです。一つのやり方に固執するのではなく、3つの文化の「いいとこ取り」をどうブレンドするか、キャリアを通じて考え続けてきました。
自国にいながらにして「世界のために働く」とはどういうことか、4つの視点から振り返ってみたいと思います。
1. 意思決定:「時間をかけるYes」と「素早いGo」の芸術
ベトナムで働いていても、意思決定のプロセスは、その企業がどの国の旗を掲げているかで大きく変わりました。
日本企業にいた頃、私は「根回し(Nemawashi)」を学びました。大きな決定は会議の場ではなく、会議の前に行われる、静かで敬意を払った対話によって決まる。調和(ハーモニー)を保つことは、結果そのものと同じくらい重要だと教わりました。
一方、ドイツの企業では、その「無言の合意」は姿を消しました。ドイツ人の同僚たちが何より重んじたのは「明快さ」です。アイデアに欠陥があれば、オープンかつ論理的に議論される。「行間を読む」必要はなく、最も効率的な道筋に焦点が当たっていました。
そしてオーストラリア。オージー(豪州人)のチームとの仕事は、とても新鮮でした。彼らは「とにかくやってみる(having a go)」の達人です。意思決定では、完璧な合意や完璧なロジックではなく「勢い(モメンタム)」を重視する。何週間も話し合うくらいなら、まず素早く試して、後で修正すればいいという考え方です。
私の考察: 最善のアプローチはミックスすることだと学びました。新しいアイデアを試すときはオーストラリアのスピードを、それが堅実であることを確認するにはドイツのロジックを、そしてチーム全員が納得して進めるためには日本のコンセンサスを活用しています。
2. 時間:グローバルな時間軸の中でバランスを見つける
ベトナムに住みながら外国企業で働くことは、時間管理において興味深い挑戦をもたらします。
日本の文化では、「プレゼンス(その場にいること)」への深い敬意を目の当たりにしました。チームと時間を共有し、懸命に働くことが、忠誠心の証であるという感覚です。そこから、勤勉さと「一蓮托生」の精神を学びました。
ドイツの文化では、焦点が「費やした時間」から「達成した成果」へと移りました。ドイツ人のマネージャーは、私が夜8時にデスクにいるかどうかを気にしません。仕事が完璧で、期限通りに提出されているかを重視する。「フォーカス・ブロック」を教えてくれました。日中は100%の集中力で働き、ノートPCを閉じた瞬間にプライベートを全力で楽しむ。そういうスタイルです。
オーストラリアは、それをさらに一歩進めていました。十分に休息を取り、仕事以外の人生を楽しんでいる人こそが「より良い従業員」だ、という考え方です。スケジュールに「ノー・ウォーリーズ(気にするな)」の感覚を持ち込み、生産性と並んでメンタルヘルスを大切にしていました。
私の考察: 私は今、ドイツ流の集中力で勤務時間を守り、オーストラリア流のワークライフバランスを確保しながら、チームを失望させないという日本流の信頼性を維持するようにしています。
3. コミュニケーション:ハイコンテクスト vs 直接的な表現
コミュニケーションが、最も急な学習曲線を伴いました。
日本の環境では、「空気を読む」ことを学びました。ベトナムも「ハイコンテクスト(文脈依存度が高い)」な文化なので、これには自然なつながりを感じます。遠回しに、丁寧に、誰も「メンツ」を失わないように配慮するやり方です。
ドイツは、完全なリセットでした。ドイツ人のコミュニケーションには、美しいほどの正直さがあります。問題があれば、はっきりと言う。この率直さのおかげで、どれほど多くの時間が節約できたことか。焦点が「人」ではなく「仕事」に向いている限り、失礼にならずに単刀直入に伝えられる、と気づきました。
そこにオーストラリアの「メイト(仲間)」要素が加わります。オージーの会社では、階級組織(ヒエラルキー)がとてもフラットでした。上司と冗談を言い合ったり、コーヒーを飲みながらアイデアに異を唱えたりもできる。職場が「対等な仲間のコミュニティ」に感じられる、そんな雰囲気がありました。
私の考察: 今日、私はドイツ流の明快さで(全員が目標を理解できるように)伝え、それを日本流の丁寧さで包み(敬意を示し)、オーストラリア流のフレンドリーさを添えて(仕事を楽しくするために)届けるよう努めています。
4. 品質:職人魂、システム、そして近道
最後に、それぞれの国は「良い仕事」の定義についても、異なる教えをくれました。
日本は「改善(Kaizen)」の精神を授けてくれました。日々の小さな積み重ねへのこだわり。報告書の一箇所、あるいはコードの一行といった細部にまで誇りを持つ、ということです。
ドイツは「システム」の価値を教えてくれました。単発の良い結果ではなく、毎回必ず品質を保証できる「プロセス」を追い求める。壊れないマシンを構築するような仕事の進め方です。
オーストラリアは、機転を利かせる(リソースフルネス)力をもたらしてくれました。「システム」では解決できない問題が発生したとき、オージーの同僚たちは真っ先に、常識にとらわれない独創的な「近道」を見つけ出し、仕事をやり遂げてしまうのです。
私の考察: 私は、ドイツ流のシステムでプロジェクトを構築し、日本流の細やかさで磨き上げ、事態が混乱したときのために常にオーストラリア流のバックアッププランを用意しておくことを目指しています。
結論:ベトナムにいながら、世界のベストを
ベトナムにいながら日本・ドイツ・オーストラリアの企業で働いた経験は、私の人生で最高の教育でした。一つの文化だけを選ぶ必要はないと気づいたからです。
「ハイブリッド・プロフェッショナル」になることで、日本の職人のような「信頼性」を持ち、ドイツのエンジニアのような「効率性」を備え、そしてオーストラリアの起業家のような「適応力」を発揮することができます。
デジタル空間で、国境が消えつつある世界に私たちは生きています。成長のために、必ずしも新しい国へ移住する必要はない。必要なのは、「考え方(マインドセット)」を移動させること。私はこれらの文化の架け橋となり、世界のベストを日々の仕事に取り入れていることを誇りに感じています。
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この3カ国での経験は、AIが加速するいまの開発現場でも生きています。AIが書いたコードで失敗した話もあわせて読んでみてください。
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IT業界で15年の経験を持つ技術リーダー。「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」という考え方で、卓越した顧客第一のソリューションを提供します。
